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< Bayonetta
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Records of Time[edit]

「光と闇が生み出す
認識こそ真理の世界で…」

「目も眩む昔――」
「ヨーロッパの辺境に
歴史の観測者たる一族がいた」
「闇の従者 アンブラの魔女と――」
「光の使者 ルーメンの賢者」
「両者は互いを敬い
力の均衡を保ちながら――」
「歴史を支え合った」
「その均衡が壊れるまで…」

「突如 両者は反目し
互いに憎悪を燃やして――」
「争い始める」
「その炎はヨーロッパ全土を
無限の戦渦に陥れた」
「奇襲 暗殺 惨殺」
「壮絶な抗争だった」
「賢者たちは
神の力を以って戦ったが――」
「闇に暗躍する
魔女の攻勢に圧され始め――」
「開戦から数年後
抗争は魔女の勝利で幕となる」

「安息も束の間――」
「力を恐れた人々による
魔女の糾弾が始まった」
「生き残った魔女は
捕らえられ――」
「徹底的に断罪された」
「神の奇跡も
”魔女狩り”を加速させ――」
「ついにアンブラの魔女も
全て滅び去った」
「ただ一人を除いて…」

ベヨネッタ
「ジャンヌ!」

ジャンヌ
「無事だ!」


ベヨネッタ
「行くぞ 離れるな!」


	現代

Prologue[edit]

Prologue

エンツォ
「ハンプティ ダンプティ墓の中か」
「壊し屋エッグマンも あっけねえ」
「ホトケを運んで 俺の仕事は終わり」
「帰ってもいいだろ?」
「今日が何の日だと?」
「お祈りなんか やめとけ」
「奴は札付きのクズだぜ」
「見ろよ 誰が死を悼んでる?」
「確かに こんな依頼でも
断るわけには いかねえ」
「あの組織はヤバいからな」
「まぁ この街は――」
「ワケありのホトケだらけだ
俺たちが世話するしかねえ」
「いい金に なるしな」
「いつまでやってんだ?」
「こんな奴 地獄で焼かれて
目玉焼きが関の山さ」
「そしたら天に昇れるぜ
腹が減った神様の――」
「朝メシとしてな!」
「さて 俺は帰るぜ」
「かわいいガキどもが
誕生日を祝ってくれるんだ」
「それじゃ あばよ!」

「まさか迎えが?」
「あんなクズに!?」
「この忌々しい光!」
「来たんだな?
見えるんだろ お前には!」

ベヨネッタ
「祝福の光に包まれて
天より 神の御使いが…」

エンツォ
「なんてこった」

ベヨネッタ
「光の主よ
我らが家族の御霊を救い給え」

「ネンネさせてあげるわ」

エンツォ
「俺の誕生日が!」
「お母ちゃん!」
「勘弁だ エッグマン
もう悪口は言わねえ!」

ロダン
「悪魔から魂を 奪おうってのか?」
「どいてな」

エンツォ
「ロダン!?」

ロダン
「エンツォじゃねぇか」
「隠れてな」
「店のツケを払ってもらう前に
死なれちゃ困る」

ベヨネッタ
「キツくお仕置き しちゃうわよ」

ロダン
「ビューティフル!」

ベヨネッタ
「ひどいわね こんなオモチャを」

ロダン
「心配するな 数ならある!」

ベヨネッタ
「次!」

ロダン
「見てないで お前らも働きな!」
「それで最後だ
そろそろ幕にしな!」

ベヨネッタ
「曲もダンスも ここからよ!」

***

エンツォ
「待てよ!」
「俺は死んでねえ 規則違反だろ!」

***

エンツォ
「俺の車が! 誰の仕業だ!」

ベヨネッタ
「分かった?
私は容赦しないわよ!」

***

ベヨネッタ
「こんなオモチャの銃 使えないわ」

エンツォ
「俺の車がメチャクチャだ」
「なんでいつも こんな目に
遭うんだよ!」

ベヨネッタ
「エンジンかかるじゃない」
「それより
アンタが掴んだっていう情報――」
「聞かせてくれない?」

エンツォ
「それどころじゃねえ!」
「散々ひでえ目に 遭わせといて――」
「情報よこせだと?
何 考えてんだ!」

ロダン
「騒いでると エッグマンが
目を覚ますぜ」
「いいのか?」
「先に帰るぜ」
「早いとこ アレを仕上げねえと――」
「困るだろ?」

エンツォ
「待てよ ロダン」
「エッグマンはどこに?」

ベヨネッタ
「彼なら――」
「きっとアッチでも 嫌われ者よ」
「死神に 蹴り出されて
帰ってきたりして…」

ロダン
「嫌なら埋めてきな ホレ」

ベヨネッタ
「早くして」
「5分経ったら
歩いて帰ることになるわよ」

エンツォ
「置いてかないでくれ!」


***

エンツォ
「畜生 何て日だ!」
「依頼で儲けた分が
修理代でパアだぜ!」
「俺に奴らが見えたら
タダじゃ おかねえ」

ベヨネッタ
「まずは前を見てくれる?」

エンツォ
「すましてんじゃねえ
お前はどうだ」
「この物騒な街でも――」
「天使に手を出す奴なんて
見たことねえ」
「尼増のカッコでだ!」
「お前 ロクな死に方しないぜ」

ベヨネッタ
「お陰で毎日 恵まれてるわ」
「オモチャにね」

エンツォ
「20年前
湖の棺おけで目覚めて――」
「魔女だって記憶しかねえ」
「その上 毎日天使を
生贄に差し出さなきゃ――」
「地獄行きだとよ」
「人の事は言えねえが
そのバチ当たりな人生にゃ――」
「同情するぜ」

ベヨネッタ
「伝記作家なら 他を雇うわ」
「厄介な葬式の見返りに情報を」
「約束よ」

エンツォ
「ちょっと待ちな」
「車を見ろ タダ働きだぞ!」
「ロダンの店で酒くらい飲ませろ」
「情報は確かだ」
「双子の宝石の片割れと―― 」
「お前の過去に関わる情報よ」
「金より宝石か オトメじゃねえか!」
「冗談だろ!」

ベヨネッタ
「エンツォ ついてるわよ」
「…うるさい虫が」

エンツォ
「何だ ありゃ!?」

*

ベヨネッタ
「あんたは…」

ジャンヌ
「どうした ベヨネッタ」
「まだ夢の中か?」

***

ベヨネッタ
「あの女…」

***

ロダン
「奴ら デカい騒ぎを」
「魔界でも話題だぜ」

ベヨ
「そう」

ロダン
「今や 世界は複雑だ」
「”人間界”」
「”魔界”」
「”天界”…本来はな」

ベヨ
「その真ん中に”プルガトリオ”
ほんと 複雑ね」
「なぜ そんな話を?」

ロダン
「バランスだ」
「たまに人間界で暴れる奴もいるが
領分はわきまえてる」
「だが度が過ぎると――」
「”黙示録”さえ
絵本に思えるような――」
「天界と魔界の 全面戦争が
始まるぜ」

ベヨ
「仲良し同士 好きにしたらいいわ」
「興味ない話ね」

ロダン
「これは誘いに違いない」
「エンツォが情報を掴んだのも
出来過ぎてる」
「狙いは お前の消えた記憶か…」
「お前にプレゼントだ
特別製のな」
「悪魔も 喉から手が出るぜ」
「可愛がってくれよ」

ベヨ
「私を誘うのは 大変よ」
「でも 小物相手も
退屈してきたし――」
「もっと上品な子とも
遊んでみようかしら」

ロダン
「随分 飲むな」
「余計な世界だが
急いだ方がいい」
「向こうも
ただ待っては くれないぜ」
「エンツォ
お前に つけとくぜ」
「払わねえだろうがな」

Chapter 1[edit]

エンツォ
「ヨーロッパの闇市場に
デカい宝石が出たんだと」
「名は”光の右目”」
「双子の宝石”世界の目”の
片割れよ」
「お探しのな」
「何百年も 人の手を渡り歩き
どこかへ消えてた 幻のブツだ」
「闇市場も大騒ぎよ」
「その法外な値段に――」
「買い手が付かず
宝石は闇へ逆戻り」
「だが 売り手の居所は
掴んでるから――」
「そいつを締め上げりゃいい
…楽なもんだぜ」
「このエンツォが
必死で掻き集めた情報だ」
「ふんだくった金で
追加報酬の方も頼むぜ」
「さあ 早いとこ行って来な」
「ヨーロッパの辺境のパラダイス――」
「ヴィグリッドに!」

*

「終点 ヴィグリッド」
「当区の入域には――」
「当局発行の
入域許可証が 必要です」
「降車の際には許可証の携行を」
「繰り返します…」

バルドル
「ようこそ 愛する子よ」
「”世界の目”開眼の時が
来たのだ」
「恐れる事はない」
「美しい我が娘よ」
「私がいつでも守ってあげる」

ベヨ
「これがパラダイス?」

***

ヴィグリッド
駅ホーム

ロダン
「思った通り 街中 天使だらけか」
「悪魔どもが騒ぐわけだ」

ベヨ
「つまり?」

ロダン
「お前や俺の住む街も――」
「”他世界”に近い場所だ」
「だが この街は飛び抜けてる」
「”天界”との距離が異常に近い
…街の人間もな」
「ここなら
魔界で重宝する こいつが――」
「随分 稼げそうだぜ」
「何か入用な時は――」
「こいつを持ってきな
色々 都合してやるぜ」

ベヨ
「ガメついこと」
「エンツォと気が合うわけね」

ロダン
「それから 言っておくが――」
「俺は 俺の作った武器の働きを
見たいだけだ」
「余計な世話は しないぜ」

ベヨ
「私も一言いい?」
「誰が作った武器か
知らないけど――」
「もし不用意に出てきたら…
こう言おうかしら」
「”ケツにブチ込むよ!”」

ロダン
「そのノリだ!」

***

ヴィグリッド
駅舎前

アンブラの魔女
「何をしている 急げ!」

Chapter 2[edit]

ジャンヌ
「来たな…」
「自分探しの旅か?」

ベヨ
「どこかで見た顔に 同じ力…」
「失礼だけど――」
「どちら様?」

ジャンヌ
「同じ力?」
「永い眠りで――」
「頭まで鈍ったようだ」

ベヨ
「目覚めて20年よ」
「腕慣らしなら もう済んでるわ」
「試してみる?」

ジャンヌ
「もう試した」
「目覚めてからの20年を――」
「お前は無駄に過ごしたようだ」

ベヨ
「そうね
おかげで 物覚えが悪くて」
「色々 教えてくれる?」

ジャンヌ
「二つの観測者 ”世界の目”」
「全てを司るもの」

(回想)

アンブラの長
「ジャンヌよ 掟に従い――」
「今より 戦士たる資格を示すのだ」
「組み手の相手を選べ」

ジャンヌ
「ならば あの日陰者と」

アンブラの長
「それは許さん!」
「不浄なる者との交わりは
教義への冒涜だ!」

ジャンヌ
「なに 初めてではない」

アンブラの長
「何だと?」

ジャンヌ
「さあ 正式な決闘を」

ベヨ
「いいわよ
景品でも もらえるならね」
「縫いぐるみがいいわ」

***

ベヨ
「ジャンヌ…?」

***

ヴィグリッド
市街地

警備員
「止まれ!」

ルカ
「運命を信じる?」
「僕らの出会いは運命なんだ」

警備員
「貴様 止まらんと容赦しないぞ!」
「どこへ行った?」

ルカ
「サヨナラ」
「フルール ド シレ」
「フローラルブーケの名香か」
「ローズマリーの甘い香り――」
「その花言葉は
”記憶 想い出”だ」
「お前には似合わないぜ」
「ベヨネッタ!」
「ふざけるな!」

ベヨ
「エンツォに仕掛けた盗聴器――」
「一つだけじゃなかったのね」
「お利口になったじゃない チェシャ」

ルカ
「俺はネコじゃねえ」
「ルカだ」
「覚えておきな」
「待て!」
「あの日のことは忘れねえ」
「絶対にな」

ルカ(回想)
「父さん!」

ルカ
「正体は分かってる」
「仲間は誰も信じないが――」
「…信用ねえしな」
「だが俺は知ってる 真実をな」
「街中――」
「親父が殺された日と 同じ匂いだ」
「ここで真相を暴けそうだな
ベヨネッタ!」

ベヨ
「いいこと教えるわ チェシャ」

ルカ
「俺の名は…」

ベヨ
「私の香水にローズマリーは
使われてないの」
「あれは魔よけの香りだもの」

***

ルカ
「後ろ暗い奴ほど よく逃げる
こんなふうにな!」
「追い詰めてやるぜ」

***

ベヨ
「誰?」
「隠れんぼは もう終わりよ
ネズミさん」
「子供じゃない」
「この街の子?」
「みんなと違う服ね」

フォルティトゥード(回想)
「観測者 ”世界の目”」
「魔女が持つ その片割れを
我らの手に!」

Chapter 3[edit]

フォルティ
「光の世界 ラグナより――」
「我を このカオスへ召喚したのは
貴様か?」
「この気配は… 闇?」
「闇の力を使う一族が 一人だけ
生き延びたと聞いたが――」
「我と契約を?」

ベヨ
「その冴えない顔で
私と釣り合うとでも?」
「一見見たら 忘れられない
強烈な顔ね」
「確か どこかで…」

フォルティ
「召喚者でなければ
別段 用事もない」
「邪魔をしたな」

ベヨ
「逃げるの?」
「そうはいかないわ」
「地獄の友達が
腹が減ったって うるさくて――」
「アンタはエサに丁度いいのよ」

***

ヴィグリッド
地下洞窟

***

パラディソ
~光の楽園~

Chapter 4[edit]

コロシアム

フォルティ
「魔の物と因縁のある我らには
興味深い話だが――」
「奴が辿り着かねば
無駄に終わろう」

ベヨ
「久しぶり また会ったわね」

フォルティ
「これは 探す手間が省けた
ベヨネッタとやら」
「大した持て成しもせず
失礼したな」

ベヨ
「今度は 歓迎してくれるんでしょ?」

フォルティ
「魔女狩りを逃れ
天に楯突く女がいると聞く」
「いずれ 魔に喰われる
不憫な女だ」
「それが お前の事ならば
今ここで――」

ベヨ
「あんた達を狩る理由 分かる?」
「その顔がムカつくからよ」

フォルティ
「闇の力で 我らに歯向かうと?」
「いつの時代も 魔女どもは――」

ベヨ
「消えな トリ頭!」

***

ベヨ
「あら 色男になったじゃない」

フォルティ
「これほどとは… 噂どおりだ」

ベヨ
「噂って?」

フォルティ
「このフォルティトゥード
喜んで 礎となろう」
「主神ジュベレウスの祝福あれ!」

バルドル
「愛する娘よ」
「私が見守っている」
「さあ進みなさい」

Chapter 5[edit]

魔女と賢者の谷

ベヨ
「ここ どこかしら」
「随分 飛んできたわね」

***

アンブラの魔女
修練場跡

ベヨ
「私の口紅?」

ルカ
「写ってねえ!」

ベヨ
「”女の子のいない口紅なんて”」
「意味分かる? チェシャ」
「それより
この街で よく無事でいたものね」

ルカ
「俺の名は――」
「ルカだ!」
「人の心配をしてる場合か?」
「500年に一度の復活祭で――」
「街は厳戒態勢だ」
「色男の俺は顔パスだが――」
「お前は どんな手で
入り込んだのやら」

ベヨ
「あの子 どこかで…」

バルドル
「私の可愛い娘よ」
「あの子は未来への鍵」
「あの子の救済が お前の救済に」

ルカ
「お前の目的は ある探し物だ」
「だが その探し物に近付くほど
お前は 知ることになる」
「呪われた過去をな!」
「その宝物が見つかるのが
楽しみだぜ」

ベヨ
「山分けでも欲しいの?
欲に目が眩んで――」
「死ななきゃいいけど」

ルカ
「死ぬだって?
お前は 生きてるかさえ怪しいぜ」
「真実ってのは
目に見えるものだからな」
「俺がお前に見るのは 一つの真実」
「親父を殺した真実だ」
「真実は誰にも拒めない」
「真実は 俺を暗闇から救い出し――」
「真実は お前を白日に晒す」
「それが俺の勝利だ」
「もちろん汚い真似はしねえ」
「残忍な魔女とは違うからな」
「なんだ 俺を殺ろうってのか?」
「やれよ それがお前の本性だ」
「でも女の子を泣かせちまうな」
「クレアに トリッシュ――」
「シルヴィアや…」
「アミー
…この子は怒ったら怖いぜ」
「御愁傷さま!」
*
「何を」

***

ヨルムンガンドの杖
内部

***

テンパ
「どういうつもりだ」
「一度ならずも 二度まで
我らの邪魔を」

ジャンヌ
「邪魔は 貴様の部下どもだ」
「私は 私のやり方でやる」
「手出しは無用だ!」
*
「そろそろ 勘を取り戻したか」
「気分はどうだ?」

ベヨ
「あんた何者?」
「生き別れた姉かしら」

ジャンヌ
「姉? 笑わせるな」
「アンブラ一族の
至宝を巡って――」
「我らは争って来た」
「さあ決着を!」
*
「また夢の中か?」
*
「奴ら また下らぬ真似を!」
「だが 悪くない趣向だ」

***

ジャンヌ
「どうした 何を恐れている?」

ベヨ
「恐れるですって?」

ジャンヌ
「まだ”その時”では ないようだな」

***

ベヨ
「これは驚いたわね」

Chapter 6[edit]

魔女の鍛練房跡

ベヨ
「何してるの?」
「隠し事かしら」
「おいで」
「浮気だったら――」
「許さないわよ?」
*
「あら」
「これは厄介ね」

バルドル
「私の可愛い娘よ」
「その子は未来への鍵」

ベヨ
「人助けなんて――」
「柄じゃないけど
アンタたちを片付けるついでよ!」

***

セレッサ
「マミー!」

ベヨ
「私 子守唄を?」

セレッサ
「マミー!」

ベヨ
「ちょっと
私はママじゃないわ」

セレッサ
「でも マミー」

ベヨ
「”マミー”は やめなさい」
「ゴキブリと泣き虫は 大嫌いなの」
「”泣き虫ゴキブリ”なんて最悪」
「だから泣かないの」

セレッサ
「うん マミー」

ベヨ
「上出来」
「こんな所で 良く生きていたものね」
「名前は?」

セレッサ
「セレッサ」

ベヨ
「セレッサ?」
「チビ助
あんた ここから来たの?」

セレッサ
「お家から」

ベヨ
「それは長旅だこと」
「何しに ここへ?」

セレッサ
「パパが おいでって」

ベヨ
「そのパパは どこに?」

セレッサ
「お仕事に行っちゃった」
「もう お家帰る!」

ベヨ
「あんたと一緒には行けないの
分かる?」

セレッサ
「うん マミー」

ベヨ
「おいで チビ助
ここから 出してあげるわ」
「ただし泣き虫は嫌よ」
「泣いたら 置いてくから
いいわね」

セレッサ
「OK マミー!」

***

ヴィグリッド
廃墟

***

パラディソ
~神域の片鱗~

ベヨ
「だから迷子になるのよ」
*
「奴らは始めて? 心配ないわよ」
「で 用件は?」
「おもてなしなら――」
「デザートはあるかしら」
*
「最高ね ダンスパーティーなんて」
「セレッサ 見てなさい」

***

ヴィグリッド
空港前

セレッサ
「マミー!」

ルカ
「マミー? お前が?」

ベヨ
「チェシャ 冗談はやめてよ」
「私が子供に興味なんて」
「”子作り”なら 話は別だけど」

ルカ
「そんな話に興味は…」
「俺も あるけど――」
「待て …何の話だ?」
「とにかく あれだ――」
「ここでヤマを張ってて
正解だったぜ」
「島へ渡るには この先の
ハイウェイしかねえからな」
「違うか?」

ベヨ
「ああ 島ね」
「そうだったわ」
「何の真似?」

ルカ
「ふざけるな」
「この子に 妙な術でも
かけたんだろ?」
「何て 悪趣味な奴だ」
「俺の親父を殺した上に――」
「待てよ お前…?」
「まさか この子の親まで!?」

ベヨ
「考えてみたら いい機会ね」
「その子 任せるわ」
「ちゃんと面倒見ておきなさいよ」
「見えないオバケが
狙ってるかもしれないからね」

セレッサ
「マミー うしろ!」

ルカ
「消えた…!?」

セレッサ
「マミー!」

ベヨ
「私の姿が…?」

Chapter 7[edit]

テンパランチア
「お前がベヨネッタか」
「いい目だ」
「観測者の光は
衰えてはいないな」

ベヨ
「私って人気者ね」
「ああやって
みんな 気を引こうとして」
「サインなら お断りなのに」

テンパ
「遥か昔――」
「ファースト ハルマゲドンにより
この世は三分された」
「我らの宿願
それは 主神を復活させ――」
「世を あるべき姿に戻す事」
「お前を礎としてな」

ベヨ
「おしゃべりはその辺にして
早く遊びましょうよ」
「アンタもそのつもりでしょ?」
「お話は後でゆっくりネ」

***

ベヨ
「おしまい?
それじゃコレも返すわ!」

テンパ
「素晴らしい!」
「その目 奴の言葉通りだ」
「主神ジュベレウスに栄光あれ!」

ベヨ
「バカね
話を聞くの 忘れてたわ」

Chapter 8[edit]

ヴィグリッド
幹線ハイウェイ

ベヨ
「ヒールで この橋を?」
「タクシーでも 通らないかしら」

警備員
「不審車両の接近を確認
ゲートを閉めろ!」

ルカ
「どうだ 譲ちゃん!」
「楽なもんだろ?」

セレザ
「マミーが来たよ!」

ベヨ
「ハロー チェシャ」
「仕事も運伝も まっすぐね」

ルカ
「島へ行くのが 奴らにバレた」
「ドジったぜ」

ベヨ
「私の先回りを?」

ルカ
「お前を追うなら――」
「宝石の持ち主がいる
イザヴェル社へ行けばいい」

ベヨ
「何でも お見通しなのね」
「車の運転の方は
だいぶ不安だけど」

ルカ
「だったら降りな!」

ベヨ
「潮風の中 歩いたら
髪が痛むじゃないの」

ルカ
「俺とはリンスの差だな」

ベヨ
「チビ助 伏せて!」
「もっと飛ばして
お客は 私が相手するわ」

ルカ
「最高!」

ベヨ
「私が島へ渡ると
そんなに困るの?」
「余計に 行きたくなるわね」

***

ルカ
「マジかよ」
「やり過ぎだろ!」

ベヨ
「右よ ハイウェイを降りて!」
「こんな事したら
後始末が大変よ?」

Chapter 9[edit]

パラディソ
~時の記憶の墓場~

ベヨ
「ここは まさか…」

バルドル
「愛する娘よ」
「私が見守っている」

Chapter 10[edit]

パラディソ
星の大海

アンブラ長
「組み手の相手を選べ」

ベヨ
「私がヴィグリッドに…?」
「ジャンヌ… セレッサ」
「チビ助?」
*
「身持ち悪いわね」

***

セレッサ
「マミーはどこ?」

ルカ
「ええと… きっと何か 探し物だよ」
「あの女…
子供にまで 術をかけやがって」
「この子の親に 何かしてたら――」

セレッサ
「マミー」

ルカ
「泣くな ママなら すぐ来る」
「ほら キャンディだ」

セレッサ
「これ 何ていうの?」
「キャンディだよ イチゴ味の」
「キャンディだって
あんたもいる?」(猫人形に)

ルカ
「友達かい?」

セレッサ
「チェシャっていうの
可愛いでしょ?」

ルカ
「チェシャ?」
「…何て名だ」
「さて ハイウェイの次は――」
「どの作戦で行こうか」
「それに あの子をどうするかだ」
「譲ちゃん ママの事だけど…」

セレッサ
「マミーは強いのよ
オバケも やっつけちゃうの」

ルカ
「オバケ?」
「あいつ自身がオバケだろ」

Chapter 11[edit]

セレッサ
「マミー 助けて!」

ルカ
「大丈夫だ 離れるなよ」

セレッサ
「マミー やっちゃえ!」

ルカ
「マミー?」

セレッサ
「マミーがオバケをやっつけてる!」
「おじちゃん
ちゃんと見なきゃダメよ」
「ほら!」

***

ルカ
「何だこれは?」

セレッサ
「マミー!」

ルカ
「譲ちゃん 危ない!」

セレッサ
「チェシャ!」

ベヨ
「ネコちゃん 大丈夫?」
「痛かったの」
「じゃ お仕置きしなきゃね」

***

ベヨ
「これでどう?」
「まだ足りないの」
「手加減なしね」


ユスティジア
「ルーメンの賢者の男が
言った通り――」
「確かに 素晴らしい力だ」

ベヨ
「ルーメンの賢者?」

ユス
「永きに渡り
この世界を観測し続けた――」
「光と闇の 二つの目」
「新宇宙創造は目前だ」
「ベヨネッタ
お前にジュベレウスの祝福あれ」

ベヨ
「あの二人はどこ?」
「まあ きっと無事よね」

Chapter 12[edit]

セレッサ
「おじちゃん それ もういい?」

ルカ
「ああ… ホラ」
「譲ちゃん
その魔法の眼鏡を どこで?」

セレッサ
「眼鏡がなくても
オバケは 見えるもん」

ルカ
「オバケだって?」
「ベヨネッタは… 君のママは――」
「そのオバケたちと
戦ってるのかい?」

セレッサ
「マミーは魔女よ
みんなを守る 強い人なの」
「私もマミーを守るために
魔女になる!」

ルカ
「魔女が… みんなを?」
「まあいい」
「子供と議論しても 始まらねえ」

ベヨ
「そうね」

セレッサ
「マミー!」

ベヨ
「楽しい男ね チェシャ」
「次の狙いはアレ?」
「はい チビ助」
「まさか 泣いたりなんか…」

セレッサ
「してない!」

ルカ
「ベヨネッタ
俺が何度 問い詰めても――」
「お前は いつも――」

ベヨ
「その話なら…」

ルカ
「”誤解だ”の一点張り
頑固な奴だぜ」
「俺の親父も
ジャーナリストだった」
「俺よりずっと立派な類のな」
「親父は 取り憑かれたように――」
「ある事件を追っていた」
「謎の事件だ」
「闇の従者 アンブラの魔女
光の従者 ルーメンの賢者」
「彼らが司る全能の力
”世界の目”」
「だが光と闇の一族は
ある時 忽然と姿を消す」
「その場所は… 御存知だな」
「500年前の この街さ」

ベヨ
「500年前…」

ルカ
「時の権力者に仕え
平安を司った 両一族」
「彼らは それぞれが持つ
”観測者の目”で――」
「世を見守った」
「だが突如 終焉は訪れる」
「きっかけは
ある男女が 禁を破り――」
「子を儲けた事だ」
「女は投獄
男も一族を追われ――」
「禁断の子供は
魔女一族に引き取られた」
「だが均衡を失った 光と闇は――」
「破滅へと突き進む」
「”二つの目を持てば
世界を手に出来る”」
「その伝承が
幾千もの争いを呼び――」
「両者は死に絶えた」
「親父は冷笑の的だったが――」
「俺は信じてるぜ」
「ここに魔女が いるんだからな」
「500年たった今も
この因縁は 終わってない」
「親父は何を探り なぜ死んだのか」
「それをこの目で確かめる」
「…そして お前の事もな」
「街を支配するイザヴェル社の
アタマが――」
「裏マーケットで宝石を
売ろうとしたってな」
「表に出ない奴には
こっちから 出向くまで」
「あのジェットでな」

セレッサ
「マミーは探し物を?」

ベヨ
「まあね」

セレッサ
「失くしたの?」

ベヨ
「チビ助」
「あんたには大切な――」
「宝物は ある?」

セレッサ
「これよ 可愛いでしょ」

ベヨ
「これを誰から?」

セレッサ
「マミーでしょ 誕生日に」

ベヨ
「宝物は 失くしちゃダメよ」
「いい? チビ助」
「大切に身に着けておくの」
*
「チビ助!」

ルカ
「譲ちゃん!」
「畜生」

***

巨大軍用輸送機
ヴァルキュリア内部

ジャンヌ
「勘は戻ったか?」
「どうした 浮かぬ顔で」

ベヨ
「私がそんなに心配かしら」
「でも構ってる暇はないわ」

ジャンヌ
「随分 機嫌が悪いな」
「あの子が心配か?」

ベヨ
「あの子をどこに?」

ジャンヌ
「おやおや 大事な”チビ助”に――」
「情でも移ったか?」

ベヨ
「馬鹿なことを」
「放っておいたら――」
「うるさい男に説教されるのよ」

ジャンヌ
「いつもの軽口が冴えないな」

ベヨ
「あんたこそ どうなの?」
「もしかして 大事なものかしら」

ジャンヌ
「こんなガラクタ」

???
「何を手間とっている」
「己の務めを忘れたか?」
「復活祭は目前だぞ」

ジャンヌ
「百も承知だ」
「口を出すな!」
*
「チビ助さんの危機だな」
「そうだ 目に怒りを宿せ」
「運命を受け入れ
”闇の左目”の資格を――」
「示すのだ!」

???
「恐れるな 何も怖くはない」
「私が見守っている
愛する娘よ…」

***

ベヨ
「セレッサ!」

ジャンヌ
「まだだ あの程度では…」

***

ベヨ
「チビ助 どこなの!?」
「いたら返事して!」

セレッサ
「マミー!」

ベヨ
「セレッサ!」

セレッサ
「マミー 怖かったよ」

ベヨ
「泣かないよ」
「約束でしょ?
ゴキブリと泣き虫はダメって」
「しっかり掴まってるのよ」

Chapter 13[edit]

ルカ
「」

セレッサ
「マミー!」

ベヨ
「大丈夫 すぐ戻るわ」

セレッサ
「マミー!」

サピエンチア
「あの女 逃げたか」
「人間など 当てにならぬ」
「我が来たのは 他でもない」
「お前が
主神ジュベレウスの復活に――」

ベヨ
「お喋りは結構
付き合ってる暇はないの」
「ボスに直接 聞くわ」

サピ
「あの男がボスだと?」
「500年前の復活祭も
あの男の不手際で水泡に」
「とは言え
人間を魔女狩りへと 駆り立て――」
「忌まわしい者共を
一掃しては くれたがな」

ベヨ
「魔女狩り?」

サピ
「その後も 来たる復活祭に備え――」
「街の勃興に務めてくれた」
「残るは”世界の目”開眼のみ!」

***

ベヨ
「宝石一つに目の色変える人に
飾り物は 似合わないわよ」

サピ
「宝石?
それが我らの求めるものだと?」
「ジュベレウスの祝福あれ!」

ベヨ
「おかえり チェシャ」

ルカ
「嘘だろ!?」

セレッサ
「マミー!」

ベヨ
「すぐ戻ったでしょ?」
「操縦は任せたわ
いま 手が離せないの」

ルカ
「さて どうする」
「いっそ ワーグナーでも流して
乗り込みか?」

ベヨ
「いいわね」
「プライベートヘリなんて
最高じゃない」

ルカ
「ルカ航空 001便の皆様へ」
「こちら 機長のルカ」
「危険な旅に備え
シートベルトを!」

Chapter 14[edit]

ルカ
「ここからが問題だぜ
分かるか?」

ベヨ
「このヘリが退屈で
機内食も最悪ってこと?」

ルカ
「いいか」
「ジェットまで墜落させる
連中の島だ」
「”こんちわ!”なんて
入れるとでも?」
「外見は 華やかに見えても――」
「中身を 覗いたら…」

ベヨ
「チェシャ 見て」

ルカ
「ああ… 見てる」
「畜生!」

ベヨ
「さあ 飛ばして行くわよ」

***

セレッサ
「宝石みたい!」

ジャンヌ
「ようこそ 太陽の島へ」
「ここは富と力の街」

ベヨ
「ジャンヌ」

ジャンヌ
「ここまで来た お前なら
倒すに値する」
「ここで全てが 終わるだろう」

ベヨ
「相手になるわ
それが魔女だろうとね」

ジャンヌ
「ルーメンの賢者
魔女と対を成す 観測者」
「両者には ある掟があった」
「”光と闇 交わる時 災厄は訪れる”」
「そして500年前
禁断の子が 生を受ける」
「それが お前だ」

ベヨ
「500年前…」

ジャンヌ
「その災厄は
両一族を混沌に陥れ――」
「因果は今も続く」
「許されざる
危険因子を中心に…」
「光と闇の混じった お前を中心にな」

ジャンヌ(回想)
「”世界の目”が司るのは――」
「宇宙創造の力」
「その片割れ ”闇の左目”は――」
「誰にも渡さん!」

ジャンヌ
「我らが至宝の左目は
誰にも渡さん」
「ベヨネッタ さあ終止符を打とう」
「お前の存在に!」

ベヨ
「お前が私を…」

ジャンヌ
「どんな手を使っても
至宝を守るのが――」
「一族の務め」
「ここを 火の海に変えてもだ」

ルカ
「ミサイルは うんざりだ」
「女の子 二人
お喋りで忙しそうだから――」
「こいつは預かっとくぜ」
「乗りな 譲ちゃん!」

セレッサ
「マミー」
「マミー!」

ベヨ
「チェシャ」
「セレッサ…」

ジャンヌ
「始めよう ベヨネッタ
これ以上は待てない!」

***

ジャンヌ
「終わったな」

ベヨ
「そのようね」

ジャンヌ
「その目に まだ恐れが」

ベヨ
「恐れ?」

ジャンヌ
「500年前の記憶に恐怖し
お前はその目を――」
「曇らせた」
「だが私を倒した 今のお前なら――」
「運命を乗り越え
至宝を所有する資格がある」
「”闇の左目”を」

ベヨ
「こんな宝石を巡って
どれほどの犠牲が…」

ジャンヌ
「その輝き あの頃を思い出す」

ジャンヌ(回想)
「その片割れ ”闇の左目”は――」
「誰にも渡さん!」
「野心に狂い 掟に背いた
ルーメンの賢者よ」
「悲劇と混沌を招いた罪
決して許さぬ!」
「恐れるな
立ち向かえ セレッサ!」

ジャンヌ
「幼い頃は――」
「無邪気に遊んだな」
「だが時は流れ 私の目も恐怖で…」

ベヨ
「私たちは…」

ジャンヌ
「運命から――」
「逃げるな セレッサ」
「立ち向かい――」
「その目で真実を見ろ」

ベヨ
「ジャンヌ…!」

ルカ
「終わったか」
「何て顔だ らしくねえ」

ベヨ
「セレッサ」
「あんたって
運がいいのか 悪いのか… チェシャ」

ルカ
「言っとくが――」
「みんなに評判の”ルカ”様は――」
「実力がウリだ 運じゃねえ」
「だからビッチには――」
「いや ”ウィッチ”には御用心さ」

ベヨ
「チビ助は…」

ルカ
「気を失ってるだけだ」
「それより どうした
随分と しおらしい顔じゃねえか」

ベヨ
「しおらしい?」
「アンタこそ
そんな間抜けな顔じゃ――」
「私に付きまとうのは 許さないから
…分かった?」
「ルカ」

ルカ
「その意気だ!」

Chapter 15[edit]

ベヨ
「お目覚め?」

セレッサ
「ここ どこ?」

ルカ
「中へ誘ってるようだな
気前のいいこった」

ベヨ
「ルカ 言っておくけど…」

ルカ
「”アンタの面倒は見ないわ” だろ?
…分かってるぜ」

ベヨ
「行くわよ 離れないで」

バルドル
「愛する娘よ 目覚めの時は来た」
「”世界の目” 開眼の時が」

セレッサ
「…パパ?」
「パパだ!」
「ほら 聞こえないの?」
「うん 分かった
マミーも連れてくね!」

ベヨ
「待ちなさい!」

セレッサ
「こっちよ!」

ベヨ
「チビ助!」
「チビ助!」

ルカ
「嬢ちゃん ベヨネッタ!」


		イザヴェルビル ビル内部

Chapter 16[edit]

バルドル
「光に生きる者の前に
広がるのは――」
「深く空虚な暗闇のみ」
「光が強いほど 影は深みを増す」
「真実を見るには
光と闇の目が要るのだ」
「そうだろう? 我が娘よ」

セレッサ
「マミーが来たよ!」
「マミー!」

ベヨ
「チビ助」

バルドル
「来たな」
「愛するセレッサよ」
「ああ 何て顔をしている」
「昔は 太陽のような笑顔を」

ベヨ
「あんたが賢者の生き残りね」

バルドル
「その通り」
「我はバルドル
…こう呼んでくれてもいい」
「ファーザーと」
「忘れるのも無理はない
あれから500年になる」
「もしも 覚えていてくれたら
感動の再会になっただろうに」

ベヨ
「その子を どうやって?」

バルドル
「どこから話そうか」
「我ら ルーメンの賢者と
お前たち アンブラの魔女は――」
「歴史の観測者たる”目”を
それぞれ用いてきた」
「我らの宇宙を――」
「存続させるために」
「だが お前は500年もの間
世のすう勢から 遠ざかった」
「”闇の左目”を持ちながら」

ベヨ
「下手な謎掛けは やめて
その”目”の正体を 言いなさい」

バルドル
「長い まどろみが
多くの記憶を奪ったか」
「だが主神ジュベレウスの復活は――」
「目前に迫っている」
「失われた観測者の目を
覚ます方法は――」
「ただ一つだけ」
「その穢れなき目で
見るべきものを 見れば良い」
「神を葬り 苦難を超え――」
「この街で経験した全てが
開眼への旅なのだ」
「お前の”左目”のな」

ベヨ
「御託は もう結構」
「これが最後よ」
「その子を どうしたの?」

バルドル
「言ったはずだ」
「”左目”開眼には お前自身が――」
「自らを客観することが肝要と」

ベヨ
「あんた 救いようのない男ね」

バルドル
「救い… 奇異なるかな」
「救いの道を光で照らせど――」
「光が強くなるほど
人々の心の闇は 深くなる」
「”光””闇” そして”混沌”――」
「その三位一体世界を
原初の姿に戻すより 救いはない」
「その足がかりとして
500年前の復活祭に――」
「私は人々を
魔女狩りへと扇動した」
「その結果 主神への信仰心は
強固になるも――」
「”左目”奪取に失敗」
「後の年月を 街の勃興に費やし――」
「結実の時を待つ事となった」
「ジュベレウスが復活し――」
「我ら二人が 世界の目となって
宇宙を司る時を」

ベヨ
「とても父親とは呼べないわ」

ルカ
「大した熱弁だぜ」

ベヨ
「ルカ」

ルカ
「大風呂敷を 広げたな
イザヴェルの大将」
「救いだの 光だの
クソ真面目な綺麗事には――」
「反吐が出る」
「そういう輩が
大勢 名を残してるぜ」
「大量虐殺者の汚名をな」

バルドル
「君はジャーナリストのルカ君」
「ここまで来るとは大した情熱だ」
「父親譲りかな?」

ルカ
「何?」

バルドル
「ルカ君」
「君の父上には手を焼いた」
「私の近辺を――」
「嗅ぎ回るのはいいが
噂話を広められては困る」
「湖底に眠るセレッサを
見つけてくれたところで――」
「彼には御退場 頂いたよ
この世から 永遠にね」

ルカ
「貴様!」

ルカ(子供)
「父さん!」

バルドル
「君に用はないが
ただ捨てるのも品がない」
「せめて父親と同じに
してあげよう」

ベヨ
「ルカ!」

バルドル
「せっかくの趣向が窓の外か」
「犠牲は胸が痛い」
「計画を急がねば
悲劇は幾度も 繰り返される」
「悲劇と言えば ジャンヌだ」
「お前を隠されたのには 参ったが
最後は 実に良い働きを」
「聞き分けが なかったので
少々 精神操作をしたがな」
「泣かせる別れは
最高の演出だったよ」
「さあ 今こそ目覚めるのだ」
「恐れる事はないよ セレッサ」
*
「そうだ 運命を恐れるな」
「立ち向かい その目を開くのだ!」
「セレッサ 我らは一つだ」

***

ベヨ
「喰らいな!」

***

バルドル
「主神ジュベレウスの祝福あれ!」

ルカ
「全く お前は――」
「大した奴だぜ」

ベヨ
「何を見たのよ」

ルカ
「見なくたって」
「片付いたな」

ベヨ
「まだよ」

セレッサ
「マミー… パパ」

ベヨ
「チビ助 もう怖くないわ」
「全部 夢よ」
「あんたは強い子
一人で 立ち向かえる」

セレッサ
「マミー」
「探しものは 見つかったの?」

ベヨ
「見つかったわ」
「あんたも宝物は 大切にするのよ」
「いい夢を チビ助」

ベヨ(回想)
「宝物は 失くしちゃダメよ」
「いい? チビ助」
「大切に 身に着けておくの」
 
ベヨ
「怖くはないわ マミー」
「私は――」
「立ち向かえる」

ルカ
「ベヨネッタ どうした !?」

バルドル
「永かった」
「光の右目と――」
「闇の左目」
「世界の目が 今ここに」
「”ベヨネッタ”などという女は無用」
「鍵は元より 幼きセレッサだった」
「その無垢なる目で
見るべきを見――」
「見事 歴史の観測者となった」
「それが 左目開眼の理」
「素晴らしい帰結だ」
「さあ行こう セレッサ 時は来た」
「ジュベレウスは顕現を果たす」
「我らは その目となり――」
「真なる宇宙の観測者となる」
「この身を永遠に捧げて…」
「主神ジュベレウスの祝福あれ!」

Epilogue[edit]

ジャンヌ
「間に合ったな」
「我らが至宝の左目は
誰にも渡さん」
「アンブラの誇りに懸けて!」

***

バルドル
「ジャンヌか」
「お前のおかげで――」
「”左目”が我が手に」
「お前も そこで――」
「新宇宙誕生の瞬間を
楽しむといい」

ジャンヌ
「黙って見捨てるものか」
「我が友をな!」

***

バルドル
「ジュベレウスが帰還 召される」
「三位一体世界は真の主を向かえ――」
「生まれ変わるのだ」

ジャンヌ
「セレッサ 起きろ!」

バルドル
「正気か!?」
「光と闇 一つでも欠けたら
この宇宙は――」
「消滅するぞ!」

ジャンヌ
「消えるのは お前だ」
「起きろ セレッサ」
「セレッサ」
「どうした 目を開けろ!」

ベヨ
「ジャンヌ」

ジャンヌ
「もう500年前の お前とは違う」
「今なら運命を
乗り越えられるはずだ」

バルドル
「何という事を」
「ジュベレウスの尊き力は
秩序を失った」
「光も闇も人類も
全ては渦に飲み込まれ――」
「三位一体世界は
混乱に消え行くのみ」

ベヨ
「約束のぬいぐるみ もらうわよ」

***

ジャンヌ
「地球を 巻き添えにしようとは――」
「ふざけた瓦礫だ」

ベヨ
「ジャンヌ!」

ジャンヌ
「観測者のお前が死んだら
世界は終わる」
「役目は果たしてもらうぞ
私の命に代えてもな」

ベヨ
「もちろん 果たすわ」
「私たち 二人でね」

ジャンヌ
「その目が見たかった」

***

ベヨ
「ジャンヌ!」

ジャンヌ
「無事だ!」

ベヨ
「行くぞ 離れるな!」


*

ルカ
「笑わせるぜ お前が死ぬなんて」
「また 驚かすつもりだろ」
「なあ ベヨネッタ?」

***

数日後

エンツォ
「気の毒に」
「元の棺桶に逆戻りか」
「金ヅルは無くしちまうし――」
「追加報酬もパァ 毎度ツイてるぜ」

ロダン
「知ってるか エンツォ?」
「魔女ってのは
悪魔と魂を契約しててな――」
「死んだら地獄で
苦しみ続けるんだ」
「永遠にな」

エンツォ
「だから何だ?」
「こうして ちゃんと
冥福を祈ってるじゃねえか」
「無駄なら 風引く前に帰るぜ」

ロダン
「お祈りが効くといいがな」
「地獄で一人は寂しいと――」
「お前を呼んでるかも知れないぜ」

エンツォ
「俺を? よせよ!」

ルカ
「お前を追うのも――」
「これが最後になったな」
「ローズマリー」
「魔よけの花だ 安らかにな」

エンツォ
「…おい!」
「待てよ
なんで天からお迎えが!?」

ジャンヌ
「ここに獲物が あるからな」

ルカ
「お前は――」

ジャンヌ
「こんな格好…」
「コスプレはこれが最後だ!」

ロダン
「聞いたか? 出番だぜ!」

ジャンヌ
「何をしてる まだ夢の中か?」

エンツォ
「マジかよ 嘘だろ?」
「まさか 奴が――」
「出やがった!」

ベヨ
「モーニング!」
「人使いが荒いわね」
「苦しいし虫はいるし 最悪だわ」

ジャンヌ
「無駄口はいい 片付けるぞ!」

ルカ
「エクストラ アンジェニュ?」

ベヨ
「ローズマリー
花言葉は”記憶 想い出”よね」
「似合うかしら?」
「さあ ダンスの時間よ!」